公開シンポジウム2019

 2019年6月30日(日)。梅雨入りが遅れていた京都でも本格的な梅雨空となった6月30日(日)、同志社大学今出川キャンパスにて、公開シンポジウムが開催されました。雨の中、50名をこえる方に参加いただき、第1部「2018年度の活動報告」、第2部「学校教育と医療のよりよい連携を目指して」のシンポジウムを開催することができました。

第1部では、東先生(丸太町クリニック・小学生)、立入先生(たちいり整形外科・小学生)、竹島先生(田辺中央病院・小学生)、木田先生(京都府立医科大学・中学生)、森原先生(丸太町クリニック・高校生)より野球検診の報告をおこない、エコー検査などによる二次予防の成果や一次予防としての取り組みなどが紹介されました。手術などがすぐに必要となる重篤な障害の発生件数はここ数年減少傾向にあり、検診活動の成果が上がっていることが確認され、また、同時に一次予防などのプログラムの重要性が認識されました。

また、検診活動と平行して実施している研究活動としての女子プロ野球検診(渡邊先生・同志社大学)、高齢者検診(甲斐先生・京都橘大学)、京都きっずリサーチプログラム(来田先生・京都工芸繊維大学)の概要と研究の成果についても報告がありました。目の前の選手を救う活動と同時に、将来世代の投球障害や運動器障害を防ぐためには、疫学的なデータや知見の積み重ね、新たな評価方法、予防的取り組みの効果などを研究としてファクトを積み重ね、エビデンスにつなげていくことの重要性が認識されました。

第2部では、教育委員会の森下先生より学校教育現場におけるけがの状況や体力テストの結果などのデータを紹介いただき、児童・生徒の身体的な特徴やその経年的な変化について理解することができました。また、運動部活動の位置づけや外部人材の活用状況など教育行政に関係する最新の情報を提供いただきました。また、京都市立桂川中学校校長の徳地先生からは、運動部活動指導にかかわる学校教員の現状について、ご自身の経験などにも触れていただきながら、紹介がありました。課外活動でありながら学校教育の中で大きな教育的意義を持つ部活動について、改めて参加者一同深く考える機会になりました。また、中体連の会長としての立場からも、競技力向上だけでなく健康完全管理への注力など、部活動の課題と指導者が求めるものが変化している点や中体連コーチングセミナーでの内容などにも触れていただきながら、生徒・保護者、教員(顧問)の意識改革につながれば、との期待を述べていただきました。

次に、整形外科医の立場から森原先生(丸太町クリニック)より、高野連での野球検診の歴史や取り組み内容、大文字駅伝検診、そして、今年度、新たな取り組みとして実施した中体連の指導者への講演・講習について報告がありました。

けがが発生した後の体制や早期発見、しっかり治すことの重要性、そして、けがをしないようにするための取り組みについて紹介があり、選手のサポートだけでなく指導者への支援の重要性が理解することができました。

最後に、たちいり整形外科の大江先生より理学療法士の立場から、桂川中学校で実践している様々な取り組みについて紹介いただきました。養護教諭や教員を対象とした運動器障害等に関する意識調査や運動器検診後のフォローアップの取り組み、また部活動支援、教員そのほかへの講演活動など多岐にわたる素晴らしい活動が報告されました。

最後にシンポジスト間のクロストークやフロアからの質疑など活発なディスカッションが展開され、当初の終了時刻を延長して17時20分まであっという間の時間でした。教育現場の状況や課題など、情報を共有することができ、ただし、サポートする上での課題(費用や責任など)も確認されました。

今後、いろいろと知恵を絞りながら、選手ファースト、先生ファーストとなるような教育と医療の連携が構築されることを祈念して、シンポジウムが終わりました。多くの方に参加いただき、また、活発な議論が展開され、心より感謝いたします。